【超初心者向け#02】鮎ってどうやって釣るの?
前回『鮎とはそもそも何なのだ』というテーマで、
世界一噛み砕いて(自称)書いてみました。
要するに、
『日本人とズッ友の魚』という、ソウルメイトならぬソウルフィッシュなワケです。
ではココからが本題。
ズッ友の鮎を、どうやって釣り上げるのか。
ココでは主に『鮎友釣り』について書いていきます。
『友釣りにハマると仕事も何もかも忘れてしまう』と言われるほど、鮎友釣りは人を魅了し続け、今年も何名かの犠牲(イイ意味で)が出ています。
そんな魔性の魚釣りを、
コチラも世界一噛み砕いてお伝えします。
鮎友釣りの釣れる仕組み
鮎友釣り(あゆともづり)と読みます。
現代の鮎釣りと言うと、大体がこの鮎友釣りを指した言葉になります。
そして『友』と書くのには、深いワケがあります。
『主食』
小さい頃はプランクトンを食べ、稀に水生昆虫も捕食しますが、
成長とともに藍藻や珪藻=いわゆるコケを主食とするようになります。
このコケは石に付着しており、このコケを主食として鮎は成長します。
ちなみに釣り人の間では『アカ』と呼ぶこともあります。
川遊びをされた事がある方でしたら、
水中の石に、何かで『引っ掻いた』ような跡を目にした事があるのではないでしょうか?
実はそれ、鮎がコケをこそげ取った跡なのです。
こんな感じの跡です。
コレを『食み跡(はみあと)』と呼び、釣り人はこの石跡を見て、その河川の魚の量、性質などを推測します。
戦わなければ生き残れない〜『習性』〜
皆さんも子供の頃、こんな経験は無かったでしょうか。
お母さんから好物のお菓子を与えられ、至福の時間を過ごしている時。
突然背後から気配を感じると、そこには兄弟が。
「それ、俺にも食べさせろよ」
「いやだ」
「いいからよこせよ!」
「いやだ!」
※兄弟がいなかった方は、お友達や先輩を代用してご想像ください。
鮎も同じなのです。
自身が手に入れた美味しいコケの生えている石を、誰にも取られまいと『独占』する為に『縄張りを作る』のです。
そこに別の鮎がコケを狙って侵入すると…
我々人間の様な壮絶な生存競争が始まる。というワケです。
我々はせいぜいお菓子程度でしたが、鮎にとっては生き死にがかかった大事な食料。
どれだけ必死かは、想像に難くないでしょう。
そして人間はその『縄張り意識』という習性を利用して、とんでもない方法で鮎を釣る事にしたのです…。
目には目を。鮎には鮎を。
むかしむかし…とある人間はこう思ったのでしょう。
「アイツら縄張りで喧嘩してるから、そこに自分で用意した鮎侵入させたらワンチャン釣れるんじゃね…?」
そのクレイジーな先人(褒め言葉)によって開発された釣法こそが、
『鮎友釣り』なのです。
色々な試行錯誤がなされた結果、現代の鮎友釣りはこんな感じの仕掛けを、鮎の体に取り付ける事になりました。
多くの場合、まず始めに前回のブログでも紹介した『養殖鮎』を手に入れ、
その養殖鮎にこの仕掛をセットします。
もちろん、生きた状態ですよ。スーパーで買った食用の死んだ鮎はダメです。
この仕掛をセットした鮎を『おとり鮎』と呼びます。何のひねりもないどストレートな名称です。
そしてこの鮎を、縄張り意識の強い鮎のいる場所へ送り込むと…
そうです。当然ながら生存のための食料を奪われまいと、怒り心頭で追い回します。
鮎の攻撃方法は体当たり。ぶちかまし。
当然、おとり鮎は逃げます。
察しの良い方はもう分かる事でしょう。
先程セットした仕掛けの針に、鮎の体が『引っ掛かる』のです。
ワケも分からず逃げ惑うおとり鮎に、怒り心頭の鮎をぶちかましさせて、針にかける。
これが鮎の友釣りの原理です。
凄くないですか?
でもちょっと待って下さい。
では『鮎喧嘩釣り』ではないのか?
何故『友』なのか?
それには諸説ありますが、
おとり鮎を使って鮎をおびき寄せ、引っ掛けるための『友達』という意味でつけられた。
との事です。
要するに『お前ら仲良くしろよ!(でも喧嘩してね)』という、先人のエゲつない発想力から出来た名称、釣法だったのです。
私が郡上の町中で釣りをしていると、
「すごーい魚一匹釣れてるー!!」と喜んでくださる観光客の方がいますが、
実はおとり鮎を戻しているだけなのです。なんだかとっても恥ずかしくなります。
そして野生の鮎がかかると、
「うわあ~二匹同時に釣れた~~!!」と大歓声が起こります。
全ての国民にこの誤解が解けるまで、鮎釣りの普及活動を続けようと決心しております。
今度は釣った鮎を…
激しい戦いの後は、ある種の友情が芽生える。
映画やアニメ、現実世界でもよくある事ですよね。
『昨日の敵は今日の友』というヤツです。
しかし鮎の世界では、そんな余韻が残る事なく次の段階へ進みます。
なんと今度は、
先程釣り上げた鮎に、同様の仕掛けをセットし、川に送り込むのです。
そして釣り上げた鮎をまたおとりにし…そして更に釣り上げた鮎をおとりにし…釣り上げた鮎を…
という感じで、全員漏らさずおとりにされるワケです。
このサイクルから鮎釣りは『循環の釣り』と呼ばれています。
ちなみに、
『生きた魚を利用して、縄張りに侵入させて針に掛ける』
という釣法は、世界でも鮎友釣りだけなんです。
コレって、地味に凄い事なんですよ。
やはり先人は相当なクレイジーに違いありませんね(大褒め)。
私、弱い人には興味ないの
『おとりを侵入させて、喧嘩させる』のが鮎友釣り。
では、どんな鮎でも侵入させれば釣る事が出来るのかというと…
答えは『NO』です。
実はおとり鮎に適した鮎というのがあります。
- 元気がある
- その川の平均サイズより少し小さい
皆さん、以下の二人どちらかと必ず戦わなければならない状況で、どちらを選びますか?
- 身長2m体重100kgの大男
- 身長150cm体重50kgの小柄な男
鮎も同じなんです。
自分よりも小さな鮎には、めっぽう喧嘩っ早いんです。
「コイツには勝てない」と思われると、喧嘩を売る事なく逃げてしまいます。
元気のない鮎も「コイツは縄張りを犯すほどの驚異ではない」と判断され、喧嘩をする事がなくなります。
だから鮎は『ちょっと小さめで元気な鮎』が良いとされています。
相手に合わせて、体力のある鮎を入れ替えて送り込む。
中学生の頃に寝食を忘れプレイした『ポケットモンスター』を思い出します。
というかポケットモンスターそのまんまです。
※ちなみに私は赤バージョンを買いました。
…なんだか鮎に親近感が湧いてきませんか?
その他の釣法
鮎の友釣り以外では鮎は釣れないのかというと、実はそうではありません。
他にもいろいろと方法があり、
- 竿、おもり、針をつけて竿を引き回す『ころがし釣り』
- ころがし釣りと似た仕掛けで、竿をしゃくる『しゃくり釣り』
- 毛鉤などを使う『どぶ釣り』
- しらすやふぐの皮を使った『餌釣り』
- おとり鮎に見立てたルアーを使った『鮎ルアー』
- 網漁(数種類あり)
- 鵜飼(『う』という鳥を使った漁)
有名どころでは、こんな感じでしょうか。
一つの魚を採るために、これだけの方法が存在します。
鮎がいかに日本人にとって親しまれてきたのかがわかりますね。
一つ注意点として、
どの釣法にも言えることですが、禁漁期間や河川によっては禁止している釣法もあるので、ご自分が釣りをする河川を管理している『漁業協同組合』のHPなどで確認をしましょう。
基本的に管理された河川では『遊漁券(ゆうぎょけん)』という許可証が必要になります。
郡上では、コンビニなどでも販売されています。
他のレジャー同様に、一日券や年間パスポートが一般的です。
釣りをされる場合は、必ず携行しましょう。
現場では「知らなかった」が通らない可能性もあり、
場合によっては軽度の罰則が課せられる事もあります。
また、その河川のルールの基釣りをされている、他の釣り人にとっても困る事なので、よく確認しましょうね。
鮎友釣りをススメる理由。
いかがでしたでしょうか?
『鮎』と一言にいっても、これだけの釣法が存在します。
その中で鮎友釣りをオススメする理由は、なんといっても『比較的簡単なこと』です。
しゃくり釣りやころがし釣りは、ある程度の技術を要します。
しかし、鮎友釣りは『おとり鮎が勝手にポイントに行ってくれる』というメリットがあります。
最初から二桁釣果は望めませんが、
経験者と同伴であれば、はじめは経験者に仕掛けを取り付けてもらい、オートマチックでも楽しめるはずです。
そこから次は自分で仕掛けを取り付けできるようになり、自分一人の力で鮎を釣り上げる感動。
次は釣果を伸ばす為に、あれやこれやと思いを巡らす。
鮎友釣りは、
- 「明日どこで釣ろうかな」「どの仕掛けで釣ろうかな」など、仲間がいればそれを仲間と語らう『釣る前の楽しさ』
- 針に鮎がかかった時の、稲妻が走ったような感覚『釣っている時の楽しさ』
- 美味しい鮎を食べる『釣った後の楽しさ』
この3つが揃った、とても素敵な趣味だからです。
はじめは難しく敷居が高そうに見えますが、その分楽しさも段違いです。
実際、私も20代中盤から鮎釣りをはじめ、今ではどっぷりです。
今年の夏は、鮎友釣りをはじめてみませんか?